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安定同位体スコープで覗く海洋生物の生態―アサリからクジラまで

2 月 14th, 2009

安定同位体スコープで覗く海洋生物の生態
安定同位体スコープで覗く海洋生物の生態―アサリからクジラまで

I. 安定同位体比手法とは
  1章 安定同位体比分析を始める人たちへ(高井則之・富永修)
  2章 濃縮係数の変動性-魚類を例として(石樋由香・横山寿)
  3章 安定同位体比を用いた餌料源の推定モデル(笠井亮秀)
  4章 浜名湖におけるアサリの食物源 (青木茂)
  5章 河口汽水域を利用する魚類の食物源(伊藤絹子・掛川武)
  6章 干潟におけるシギ類の食物源としての底生微生物皮膜(桑江朝比呂)
II. 資源生態研究への応用
  7章 小型浮魚類の生態研究への応用-イワシ類を中心に(田中寛繁)
  8章 溯河性魚類による陸域生態系への物質輸送(帰山雅秀・南川雅男)
IV. 回遊機構の推定
  9章 有明海筑後川河口域におけるスズキの初期回遊生態(鈴木啓太・田中 克)
  10章 海鳥類・海亀類の回遊と摂餌特性(南浩史・清田雅史・宮本 波)
  11章 北西太平洋におけるミンククジラの摂餌回遊(三谷曜子・坂東武治)

安定同位対比は、自然界の物質循環を解析するための指標として、生態学・海洋学など、各方面で活用されていますが、応用例を総括した書は少ない。そうしたことにふまえ、本書は応用例を豊富に取り入れた安定同位体研究の入門書として出版されています。

元素の同位体比が示すもの

炭素安定同位体比は、食性の履歴
炭素同位体比は、動物の食物の履歴として重要です。 例えば牛や、家畜動物が食べた餌(牧草、穀物飼料等)は、動物の組織を構成する分子に取り込まれます。 このため、動物の組織の炭素安定同位体比は、食性を示す重要なものです。 炭素同位対比を分析すれば例えば糖類の由来(異性化糖か、はちみつ等のC3植物由来の糖かといった由来の違い)や動物の飼料(トウモロコシか、牧草か)の履歴などが明らかになります。 また同じC3植物でも生育状況での環境ストレスによる差が認められ、生育地域の特徴ともなります。
窒素安定同位体比は、窒素源の由来
窒素安定同位体は、土壌中の窒素の由来を示します。 そこで植物の窒素安定同位体比は、土壌窒素の由来を示す指標となります。 この為、農法の判別などには有効な指標となります。 ただし、根粒菌などの空気中の窒素を固定する細菌を有するマメ科植物の場合は、窒素源は、空気中の窒素と土壌中の窒素の両方に依存します。 この場合、空気中の窒素固定による窒素同位体比は、大気と同じという事になりますから、有機肥料などの影響は受けにくくなるので、注意が必要です。
酸素・水素安定同位体比は、生育環境・地域の履歴
一方、植物の組織を構成する分子中の酸素は、生成過程で、植物体内の水分子中の酸素が使われます。 つまり、植物の組織中の酸素安定同位体比は、植物が育った環境の水の安定同位体比を引き継ぎます。 このため、同じ植物の品種でも育った地域の水の安定同位体比の特徴が体内に残ります。 動物も同様に飲用水として取り込む環境中の水が体組織の分子に取り込まれます。

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海と湖の化学

1 月 20th, 2009

今回紹介する本は、いつも所属する研究所の図書で借りていたもので、参考頻度が高いために今回購入したものです。

海と湖の化学
海と湖の化学

序 水の惑星
序―1 地球と海と生命の歴史
序―2 地球表層における水

第 I 部 海と湖の化学

1 海水の化学
 1.1 元素の海水中平均濃度と滞留時間
 1.2 分布を支配する要因
 1.3 主要元素
 1.4 微量元素
 1.5 酸素酸元素―酸化還元環境の指標
 1.6 アルミニウム
 1.7 マンガン―最もアクティブな微量元素
 1.8 鉄―海洋生物生産を支配する微量元素
 1.9 鉄,コバルト,ニッケル,銅,亜鉛,カドミウム,鉛―生物活性微量金属
 1.10 海洋深層水の微量元素
2 海洋堆積物の化学
 2.1 試料の採取
 2.2 年代測定
 2.3 主要構成成分
 2.4 初期続成過程
 2.5 沈降粒子の元素組成―堆積物形成の前駆過程
 2.6 堆積物の化学組成からみる海洋環境の変遷
 2.7 おわりに
3 海洋生物と微量元素
 3.1 海藻の化学
 3.2 海洋プランクトンの元素組成
 3.3 植物プランクトンの鉄取り込みのメカニズム
 3.4 植物プランクトンがクロムのスペシエーションに及ぼす影響
4 海底熱水と海底湧水の化学
 4.1 海底熱水系
 4.2 熱水のトレーサー―マンガン,鉄,アルミニウム
 4.3 海底熱水中のタングステンとモリブデン
 4.4 深海冷湧水生態系―初島沖深海シロウリガイ群集
5 湖の化学
 5.1 琵琶湖の主要成分と栄養塩
 5.2 琵琶湖のマンガンと鉄―マンガン酸化物
 5.3 琵琶湖のヒ素のスペシエーション
 5.4 宍道湖・中海
 5.5 宇曽利湖
 5.6 湖の溶存微量元素
 コラム1 海洋化学研究の源流
 コラム2 海水中元素溶存量の規則性

第 II 部 水圏微量元素の分析化学

1 共同沈殿法
 1.1 共沈による無機成分の捕集
 1.2 pH-共沈率曲線
 1.3 有機物の捕集
 1.4 表面錯体生成モデル
 1.5 微量元素の除去機構―共沈に基づくアプローチ
2 固相抽出法
3 電気化学分析法
 3.1 タングステンとモリブデンの接触波ポーラログラフィー
 3.2 ストリッピングボルタンメトリー
 3.3 カラム電極電解法
 3.4 その他の電極
4 比色法による現場簡易水質分析法
 4.1 吸光光度法
 4.2 現場簡易水質分析法
5 蛍光光度法
 5.1 ルモガリオン法によるアルミニウムの定量
 5.2 5,7-ジクロロ-8-キノリノール法によるイットリウムの定量
 5.3 モーリン法によるジルコニウムの定量
 5.4 2,3-ジアミノナフタレン法によるセレンの定量
6 蛍光X線分析法
 6.1 原  理
 6.2 装置と検出限界
 6.3 定性分析
 6.4 定量分析
 6.5 新しい分析法
7 放射化分析法
 7.1 特徴と原理
 7.2 分析操作の概要
 7.3 機器的中性子放射化分析
 7.4 放射化学的中性子放射化分析
 7.5 分析上の注意点
 7.6 海洋試料の分析例
8 クリーン技術
 8.1 一般的な注意
 8.2 試料採取
 8.3 器具類の選択と洗浄法
 8.4 ろ  過
 8.5 試薬の選択と精製
9 多元素同時分析法
 9.1 原子スペクトル分光分析法
 9.2 溶媒抽出-ICP-AES法
 9.3 カラム抽出-ICP-MS法
10 化学種別分析法
 10.1 リ ン
 10.2 バナジウム
 10.3 クロム
 10.4 ヒ 素
11 船上自動分析法
 11.1 マンガン
 11.2 鉄
 11.3 アルミニウム
12 テレケミストリー
 12.1 新しい海洋観測プラットフォーム
 12.2 現場型化学成分分析装置―GAMOS

 

詳しい目次で長くなってしまいましたが、ご覧の通り「化学」の書物であるので、環境関連の研究をされている方でも生物等の他の専門の方には難しい内容であるかもしれません。

ただし、zoobioのように物質循環研究を行っている方には、知識を深めるにあたって、これ以上網羅されている本は他になく、海洋化学分野の辞書的な役割を担える一冊といえます。

もちろん大学、大学院の学生さんや研究者の方、さらには環境コンサルタントに勤めている方などにおすすめです。

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森川海のつながりと河口・沿岸域の生物生産

12 月 24th, 2008

ラーメンおいしかったです。

こんばんは、zoobioです。

今回紹介する本は、河口・沿岸域を考える上で重要な森から川、そして海へのつながりについて述べられた本です。

森川海のつながりと河口・沿岸域の生物生産
森川海のつながりと河口・沿岸域の生物生産

1章 仔稚魚成育場としての河口域高濁度水塊(小路 淳)
2章 河口・沿岸域での陸上有機物の挙動(笠井亮秀)
3章 陸上有機物は河口域の仔稚魚生産に寄与するか(J.C. Hoffman・D.A. Bronk・J.E. Olney)
4章 沿岸域の底生生物生産への陸上有機物の貢献(富永 修・牧田智弥)
5章 河川・沿岸域への森林有機物の供給過程(長坂晶子・河内香織・柳井清治)
6章 カレイ未成魚による森林有機物の利用(櫻井 泉・柳井清治)
7章 流域環境と水産資源の関係-天塩川プロジェクト-(上田 宏・柴田英昭・門谷 茂)
8章 河川流量の時間変化とエスチュアリー生態系(山本民次)
9章 黒部川のダム排砂と富山湾の環境・生物生産(青海忠久)
10章 マングローブ植林による砂漠沿岸生物環境の改善(玉栄茂康)

 

数年前から漁師さんによる森作りが話題になっていますが、それを生物生産の観点から学術的に述べられているものです。

森から川を通って沿岸域に流れ着く無機物と有機物の動態や、それを餌とする魚類の生物生産について詳しく記述されている。

特に有機物動態安定同位体について勉強したいと考えている方には、是非紹介した一冊です。

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